2015年12月31日に初めて会った、ハクガン君ですが、何故東京都に舞い降りて、ずっとその地にいるのかが気になって仕方がありませんでした。
夜も眠れず、ずっと何故なんだろうと考えていました。
渡りのルートに関しては、『ハクガンはソビエト極北弧 北米大陸北部,グリーンランドなどで繁殖し.冬はおもに北米中郡などに,また,少数は中国などに渡り,日本にはまれな冬鳥として渡来する』(1991、Strix10、柳川 久・武藤満雄、北海道におけるハクガンの記録と十勝における初観察例)とあります。
また、1993年には国際自然保護計画として、雁を保護する会、他により、「ロシアの北極圏沿岸で繁殖し日本で越冬するハクガン個体群の復元」が試みられています。
基本的には、北極海のウランゲリ島を主な繁殖地として、北米中部などに越冬で渡ると言う事になりますが、中国に渡る少数個体が日本に足をとどめるという形でしょうか。
日本での飛来地を見てみますと、北海道から東北地方、また、日本海側が主で、太平洋側ではあまり例を見ません。
ことに、東京都では渡りのルートからほぼ外れており、渡りの途中で足をとどめたと言う訳ではなさそうです。
または、ルートを大きく迂回して、たまたま東京都を通ったのかもと言う事も考えられない事でもありません。
先の「ロシアの北極圏沿岸で繁殖し日本で越冬するハクガン個体群の復元」では、マガン君を仮親として抱卵、孵化に成功をしています。
マガン君であれば、関東地方の主な越冬地として、霞ヶ浦がありますが、それでもルートからは外れており、寸足らずです。
ハクチョウ類と一緒に来たとも考えられそうですが、東京都近辺には特に越冬地はありません。
ただ、近畿地方などにも越冬地が存在しますので、そのルート途中と考えれば、ない事ではないかも知れません。
そうなると、どうやって来たのかが大変に気になるのですが、ごく簡単に考えて、ルートを大きく迂回して、たまたま東京都を通って、舞い降りたという感じなのかも知れません。
さて、東京都足立区の荒川河川敷に舞い降りた、ハクガン君に話を戻しますと、目撃された当初(2015年10月中旬)は5羽いたと言われています。
既に2ヶ月以上この地にとどまっていると言う事になります。
現在いる3羽は全て幼鳥であり、現在はいない2羽は家族で親鳥、または兄弟だったのではないかと推測しました。
ガンカモ類、ことに大型のガンカモ類は家族で行動をし、家族間の絆が大変に深いとも言われています。
もし、当初は家族であったかも知れないハクガン君たちが、何故離ればなれになってしまったのでしょうか。
それには人為的な影響もあるでしょうし、周囲の環境によるものもあるかも知れません。
ただ、家族間の絆の深い、ガンカモ類が幼鳥のみを残して、いなくなってしまうとはとても考えにくいことでもあります。
よほどの事があったと想像するにかたくはありません。
ただ、これも当初いて、今はいない2羽が親鳥であっての事ですが、兄弟でもそれは同じ事でしょう。
現在ハクガン君3羽がいる場所の環境を考えてみますと、何故ずっといるのかが不思議でなりません。
その不思議なことは以下の点です。
①いる場所が河川敷のサッカー場と野球場の間の草地である事。当然に人間が多く、様々な脅威も考えられる事。
②河川敷なので、すぐ脇には荒川という河川が流れているが、見渡す限り、中州のような場所がないこと。身を守るために利用する場所がない事。
③陸地が主であるために様々な捕食者の脅威が考えられる事。
④まわりにはカモ類も全くと言って良いほど見えず、ほぼ孤立した状態である事。
⑤すぐ脇では釣り行為もされており、また川ではモーターボートなどの往来など、人為的な危険も大変に多い事。
⑥対岸側には首都高速が走っており、環境的にも良くない事は簡単に想像出来ること事。
⑦周辺にはハクガン君が日常採餌で利用するであろう、水田や畑地、相応の規模の湿地がない事。
などです。
基本的にハクガン君が飛来している北海道や東北の越冬地などの環境から考えたら、雲泥の差である事は誰が見ても明らかであります。
当然に食べるものに関しても雲泥の差がある物と思われますが、いる場所には野草類が多く、見ているとその野草類の葉っぱと言うより、地下茎を好んで食べているようでした。
野草類は多く生えていますので、当分は食べるものには困らないだろうという状況だけが唯一の救いです。
それでは何故この3羽はずっとこの場所にとどまっているのでしょうか。
これが最大の疑問でした。
主観的に考えるならば、家族間の絆の深いガンカモ類であるからして、当初いて、今はいない2羽を待っているのではないか。
そう考えられるのです。
または、春の渡りの時期にこの地を通って行くであろう家族との合流を待ち望んでいるのかも知れません。
そのためにこの3羽はこの地にとどまっている、と言うよりも動けないのかも知れません。
様々な危険を冒してまでも特定の地にいる、とどまっていると言うのは、ガンカモ類の家族愛・兄弟愛から来る物ではないかと想像するのです。
そう考えると、このけなげな3羽が更に愛おしく感じられてきます。
撮影に行った日に撮影に来た人、見に来た人は延べで30人ほどはいたでしょうか。
みな、適度な距離を置いて、またどんどん近づいてくるハクガン君に後退、後退を繰り返していました。
中には常連の方もいた様です。
すぐ脇では釣りをする場があり、数人の釣り人が佇んでいます。
その日ほぼ1日見た限りでは、人間の脅威はあまり感じられませんでした。
基本的に釣り人は信用できませんが、釣り人が常時近くにいると言う事も多少なりとも役立っているのかも知れません。
多分にして想像が正しければ、春先まではこの地にとどまっているであろうと考えられます。
是非、この3羽を旅立ちまでずっと静かに見守っていって欲しいと思います。
時間的な制約からなかなかその状況を見に行くことも出来ませんが、努めて様々な情報を今後も得ていきたいと思います。
珍しい種類が来た、珍鳥が来たと大手を振って喜んでいる前に何故この地に来たのか、何故この地にいるのかと言う事を考える人はいないのでしょうか。
ただ、喜んでいるだけではなく、その生態から、その背景から生きものたちを見つめることも大変に大切なことであると感じます。
なお、東京都でのハクガン君の飛来記録は実に58年ぶりだそうです。
記録としても大変に重要ですが、そのいる環境的にも新しい知見が期待出来そうに思います。
この3羽がこの地でずっと何事もなく快適に過ごすことが出来、無事に家族と合流出来るか、自分たちから北の地へと旅立つことを期待したいと思います。
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- 2016/01/01(金) 13:05:00|
- 野鳥
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